腹式呼吸が血圧を安定させ高い血圧を下げる

興奮、緊張は血圧を上げる要因になる

血圧を上げる要因はさまざまですが、ストレスの影響も、そのうちの大きな原因のひとつです。
心身にストレスなどの刺激が加わると、交感神経(内臓などを支配し、血圧を高めるなど全身の活動力を高める神経) の緊張が起こります。
すると、腎臓の上にある副腎という器官からはアドレナリンというホルモンが、また、神経の末端からノルアドレナリンというホルモンが分泌されます。アドレナリンは心臓から全身へ送り出す血液量をふやして、血圧を上昇させます。一方のノルアドレナリンは、末梢の血管を収縮させて、血圧を上昇させます。興奮したり、緊張したりすると、血圧が上がるのは、このようなしくみによります。
交感神経の緊張を取り除くことができれば、おのずと血圧が下がっていくわけですが、ストレスの多大な現代社会では、それもそれほど簡単ではありません。
そこでお勧めしたいのが、おなかを膨らませながら鼻から息を吸い、へこませながらゆっくり鼻から息を吐き出す呼吸法である「腹式呼吸」です。
腹式呼吸を実践すると、交感神経の緊張が取り除かれるため、血圧の低下が見られます。実際、腹式呼吸をした後に、する前より10mmHGほど血圧が下がるのは、そんなに珍しいことではありません。
また、腹式呼吸を日ごろから習慣づけておけば、継続的に血圧が低めに安定してくる効果も見られます。

呼吸のしすぎはかえって血圧をあげてしまう

肺の周りには胸郭という厚い壁があります。この胸廓を広げることで、肺が膨らみ、空気が入ってきます。反対に胸郭が狭ぎると、それに押されて肺は縮み、中の空気が出ていきます。
これが呼吸です。胸郭は、、上のほうが肋骨と筋肉でヨロイのように囲まれています。これを動かすには、たくさんのエネルギーが必要です。一方、胸郭の下を支えている横隔膜は、やわらかく薄い筋肉の膜です。この横隔膜を下げることによって肺に空気が入り、上げることによって空気が押し出されます。これが腹式呼吸の原理です。
胸で息を吸う、すなわち胸郭を動かす胸式呼吸に比べ、腹式呼吸では呼吸のために費やすエネルギーがごく少なくてすみます。
つまり、低燃費で車を動かすのと同じように、効率のいい呼吸ができるのです。ところで、腹式呼吸を誤解している人は、とにかく呼吸を大きくたくさんやればいいと思って、深呼吸をむやみやたらにくり返すようなことがあります。
これは、かえってよくありません。呼吸しすぎると、血液中の酸素はふえますが、その一方で炭酸ガスが過剰に出てしまいます。
すると、血液がアルカリ性になって交感神経が緊張してしまうのです。その結果、呼吸困難や動悸、けいれんなどの症状が出ることさえあります。これを「過呼吸症候群」といいます。人間が1分間に必要とする呼吸の量を「分時換気量」と【いいますが、この量はだいたい7L前後と決まっています。
それより多すぎても、少なすぎてもいけないのです。普通の呼吸の場合、1回の換気量は450ml程度で、1分間に一5~6回の呼吸が必要です。これに対して、効率のいい腹式呼吸では、一回650~800mlの空気を取り入れることができます。ですから、その分、呼吸をゆっくりと行い、回数をへらしたほうがいいのです。1分間に10回以下、できれば5、6回までへらせるといいでしょう。

自然な呼吸が一番効果的

腹式呼吸では、体をリラックスさせ、おなかを膨らませながら、息を十分に吸い、そして、へこませながらゆっくり吐き出します。おなかを膨らませると自然に横隔膜が下がり、へこませると横隔膜が上がります。
息は、鼻から吸い、鼻から吐きます。吸ったときにちょっと息を止めると、肺のすみずみまで酸素を行き渡らせ、効率のよい呼吸ができます。注意したいのは、本人は腹式呼吸をやっているつもりなのに、実際は胸式呼吸になっている場合があることです。少し前かがみになるか、あおむけになって、おなかに手を当て、おなかの動きを確認しながらやるといいでしょう。
また、力まずに、あくまでも自然に呼吸します。ときどき、息を吐き出すときに、必要以上におなかに力が入ってしまっている人がいますが、これではかえって逆効果です。
理想的にはいつも腹式呼吸になるようトレーニングするのがよいのですが、最初からそうはいきません。
まずは思いついたとき、すぐに腹式呼吸に切り換えるように心がけてください。1日に10分、20分でも、毎日実践してほしいものです。腹式呼吸は、疲れもよくとれ、精神も安定しますし、人間の基本的な健康法ではすぐに実践できる方法でもあります。
腹式呼吸は、高血圧の改善においても少なからず有効です。もちろん、薬物療法や食生活の改善など、不可欠の要素がほかにもありますが、私たちが生まれたときから行ってきた、「呼吸」という自然の営みを見直してみることは、とても大事なことではないでしょうか。