ワインの成分は血管を詰まりにくくする

フランスでは心臓病の死亡率が低い

最近、赤ワインが健康によいといわれ、さまざまな効能に注目を集めています。もともと以前から絵専門家者の間では、赤ワインと心臓病などのかかわりについて、関心がもたれて
いました。心臓病の中でも、心筋梗塞や狭心症などを虚血性心疾患といいます。

虚血性心疾患は、心臓の筋肉に酸素や栄養を供給する冠状動脈の血流が悪化して起こる病気です。
。この病気による死亡率は、動物性脂肪などの飽和脂肪酸の摂取量と比例するものとされます。事実、肉類中心の食生活を送る人が多くなる先進国では、発展途上国に比べて虚血性心
疾患の発生率及び死亡率が高いのが特徴です。先進国の中で最たる例外、つまり虚血性心疾患の少ない国は和食が食習慣として定着している日本です。ただし、日本も食の
欧米化が急速に進んでいるため注意しなければなりません。

しかし、不思議なことに、日本に次いで虚血性心疾患の発生率が低い国は、フランスです。フランスの心臓病による死亡率はイギリスの約3分の1にしかすぎません。フランス料理といえば、バターやクリームが多量に使われ、カロリーも高く、動物性脂肪の摂取量も高いはずです。
当然、フランス人の動物性脂肪や肉の摂取量はヨーロッパ諸国の中でもトップクラスです。それなのに、なぜ心臓病の死亡率が低いのか。この現象はかねてより注目され、アメリカの栄養学者によってフレンチパラドックスと名付けられました。
パラドックスとは、逆説という意味です。研究が進むにつれ、この謎を解くカギが赤ワインにあることがわかってきたのです。フランスでは日常的に大量の赤ワインが飲まれており、その赤ワインに多く含まれているポリフェノールが体内の脂質の酸化を抑制して動脈硬化を予防するのではないかと考えられています。
日本ではまだ、ワインを日常的に飲むことはまれですが、山梨県は、日本有数のワインの産地です。私は山梨県のワイン醸造組合の協力を得て、ワインを習慣的に飲用している人たちの血液の検査を行い、これまでに知られている赤ワインの効能以外にどのようなものがあるのかを調査しています。

脳卒中が起きにくい人のタイプ

山梨県でワインの製造や販売に従事している人98名を対象に、検査を実施しました。その内訳は、男性90名、女性8名。平均年齢は43.6歳(21〜81歳) です。98名のうち、84名はほぼ毎日ワインを飲んでいました。
一日の平均飲酒量は、赤ワインが1.4合、白ワインは0.8合ほどでした。ワイン以外にビールや日本酒、焼酎など他の酒類を飲んでいる人もいました。さて、98人の血液を調べていくうちにはっきりとわかったことがあります。それは、血小板(血液を凝固させる血液中の成分)の数の違いです。ワインのみを飲んでいる人と、ワインのほかに他の酒類を飲んでいる人との間で、血小板の数を比較したところ、ワインのみを飲んでいる人のほうが少ないことがわかりました。
ワインのみを飲んでいる人の血小板の数は二22.8万個プラスマイナス5.7万個だったのに対して、他の酒類も飲んでいる人は26.3万個プラスマイナス3.3万個でした。血管が傷ついて出血するとその部分に血小板が集まって、お互いにくっつき合い、固まって血の塊(血栓) をつくり、傷ついた部分を応急的にふさぎます。このように、血小板は、血管が傷ついて出血した場合に凝固して止血をするという人間にとって重要な役割を担っています。
しかし、その数があまり多いと、血管の詰まりを招き、血液がスムーズに流れなくなってしまうので、血小板の多さは脳卒中の危険因子とされています。
特に高齢者では脳卒中の危険が増すと点についても指摘されています。
いくら赤ワインが健康によいといっても、アアルコールには違いありません。飲みすぎれば肝臓に負担がかかってくるのは当然のことです。しかし、適量をきちんと守って飲用すれば、赤ワインは、脳血管障害を予防してくれる可能性は大いにあるといえるでしょう。

ワインを常飲している人は痴呆の発生率も低い

また、山梨県下の100歳以上のすべての高齢者47人を対象にある調査を行いました。それぞれの生活状況などを調査検討し、痴呆のある人とない人に分けて、性別、家族構成、居住地域、飲酒歴、喫煙歴、骨折の経験などを比較しながら、ライフスタイルと痴呆との関係をみていきました。
ここでひとつわかったことは、痴呆が発症しない人たちの多くが飲酒歴のある人たちだったということでした。さらに、その人たちが主として飲んでいる酒類の30% あまりが、ワインだったのです。その関連性については今のところ、はっきりとはしませんが、これから究明されていくことでしょう。
フランスのある研究グループの報告によれば、ワインは痴呆の一種であるアルツハイマー病の予防に効果があるということです。
この研究グループは、赤ワインの名産地として世界的にも有名な、フランスのボルドー地方に住む、65歳以上の男女37777名を対象にある調査を行いました。

1日当たりのワインの飲用量によって、ほとんどワインを飲まない「非飲用者」、250mlまでの少量飲用者」、500mlまでの1中等量飲用者」、500ml以上飲む「多量飲用者」に分けて、さまざまな調査と実験を試みました。そして3年後、生存者は2273名に減少し、このうちの99名は痴呆と診断され、さらに66名はアルツハイマー病でした。ワインの飲用量による区分けをみてみると、適量をたしなむ「中等量飲用者」では痴呆がわずか0.9% しかいませんでした。
一方、「非飲用者」では4.9% 、「少量飲用者」では5.1% となっており、「多量飲用者」は逆に1.6% と、痴呆の発生は低くなっていました。ワインの飲酒と痴呆との関連は明確に説明できるまではわかっていませんが、少なくとも虚血性心疾患に対しては予防効果のあることが明らかにされてきています。