高血圧患者の大多数に効果が期待できるカルシウム

動物実験でも効果が実証

「カルシウム=骨」が定番のカルシウムのイメージですが、カルシウムの働きは、骨を作るだけではありません。
最近の研究では、カルシウム不足が高血圧の一因となっていることや、逆にカルシウムを十分に摂取することが高血圧の予防や改善に有効であることがわかってきました。
ここでは、実際に行われた実験の結果を紹介しながら、高血圧に対するカルシウムの効果について、ごふれてみたいと思います。
実際に行われた実験では、自然発生高血圧ラット(遺伝的に必ず高血圧が起こる実験用自ネズミ) を使った実験です。この実験では、高血圧ラットを2つの群に分け、一方の群にはカルシウム入りのエサを、他方の群には一般のエサを与えて、血圧への影響を比較しました。その結果、一般のエサを食べ続けた高血圧ラットは、6週間目から少しずつ血圧が上がり始め、10週目あたりでは人間に置き換えると最大血圧300mmHg以上の数値となります。これに対して、カルシウム入りのエサを与えた高血圧ラットのほうは、6週間を過ぎても血圧の上昇がかなりおさえられました。この実験から、カルシウムは高血圧の予防や、改善に役立ちそうだという手応えをつかんだことから健康人への影響についてもリサーチしてみることになりました。

1日3本の牛乳が効果を発揮

まずは、看護学校の18歳から21歳までの女性131名を、

  1. 牛乳を1一日0~1本飲むグループ
  2. 1日1本(200cc) 飲むグループ
  3. 1日3本(600cc) 飲むグループ

の3つのグループに分け、10週間続けてカルシウムの豊富な牛乳を飲んでもらい、血
圧の変化を調査しました。

血圧の変化は最大血圧と最小血圧の両方を調べ、それぞれの血圧が高めの人、低めの人に区別して数値の変化を検討しました。
その結果、牛乳の摂取量によって血圧の変化に顕著な差が現れたのが、最大血圧が110mmHg以上だが高血圧ではない、いわば正常範囲内で高め」の人たちです。
最大血圧が110mmHg以上の人たちの場合、1 と2 のグループでは、血圧の変動はありませんでした。しかし、3 のグループでは、実験開始時の平均血圧が114mmHgだったのが、3~4週間目から徐々に下がり始め、10週間後には110mmHGまで低下しました。
最大血圧が110mmHG鞄未満の1正常範囲内で低め」の人たち、最小血圧が65mmHg以上だが高血圧ではない「正常範囲内で高め」の人たち、最小血圧が65mmHG地未満の「正常範囲内で低め」の人たちについては、いずれも牛乳の摂取量の多少にかかわらず、血圧の変動はありませんでした。
以上のことから、牛乳を.1日3本程度飲む、つまり十分な量のカルシウムを摂取すると、高めにある最大血圧は低下すると考えることができます。健康な若い人たちでこれだけの変化があったのですから、高血圧の患者さんでは、さらに確実な効果が期待できると私たちは推測しました。そこで、実際に高血圧の患者さんに継続的にカルシウム剤を飲んでもらい、個々の改善度を見ることにしました。
カルシウム剤だけを投与した例もあれば、降圧剤(血圧を下げる薬) とカルシウム剤を併用した例もありますが、いずれの場合も、投与し始めて1ヶ月目くらいで30% くらいの人に血圧の改善が見られました。
その後、改善率は徐々に上がり、6ヶ月目くらいで50~60% に達しました。これまでに250人以上の患者さんにカルシウム剤を飲んでもらっていますが、血圧がよくコントロールされ、そのうちの約50%は高血圧が改善されています。

高血圧予備軍はカルシウムで予防を

なぜカルシウム不足が高血圧を引き起こすのかということについても、だいたいわかってきました。
細胞には、常に一定の濃度のカルシウムが保たれています。この細胞内のカルシウムは、心臓や脳を動かすための情報伝達をする重要な役目をもっていて、私たちの生命を支えています。
ですから、食べ物から摂取するカルシウムが不足して、血液中のカルシウムの濃度が低下してくると、体は骨から不足分を補おうとします。ところが、骨からカルシウムが補われるとき、不足分の量だけが補われればいいのですが、そううまくいかないのです。必要としているよりはるかに多量のカルシウムが血液中に入り込み、腎臓などから排泄しきれない分は細胞内に入り込んだり、血管の壁に付着したりして、人体に悪影響を及ぼすのです。
血管壁を形づくっている平滑筋内に多量のカルシウムが入り込むと、平滑筋内が敏感になり、けいれんや収縮などの反応が起こります。
すると血流の抵抗が高くなり、血圧が上がるというしくみです。実際に、高血圧の患者さんの細胞内には、健常な人と比べて、多量にカルシウムが入り込んでいることが観察されました。
カルシウムは、いま日本人に最も不足している栄養素です。カルシウムを十分に摂取することは、高血圧の予防や改善のうえで非常に重要なことだといえるでしょう。すでに血圧降下剤を用いている重症の高血圧の場合は、カルシウムだけ摂っていればいいというわけにはいきませんが、カルシウムの摂取は、いろいろな面でプラスに働き、マイナスになることはほとんど考えられません。日常の食生活の中で、カルシウムを十分摂取するよう生活習慣を変えていくのが重要です。