血圧を上げる物質の働きを抑制

人間の体の中には、腎臓を中心とした血圧調節のしくみが備わっています。腎臓は、血液中の不要なものは尿として排出する働きを担っています。
一方、必要なものは保存・再吸収して、血液を正常に保ちます。そしてこれと同時に、腎臓は血圧を調節する大切な働きもあります。
腎臓が血圧を調節するしくみは次のとおりです。
まず、肝臓で作られたある種のたんばく質が腎臓に送られると、腎臓にある酵素(生体内の化学変化を促進する物質) の作用を受けて、アンジオテンシンⅠという物質ができます。さらに、このアンジオテンシンⅠは、アンジオテンシンⅠを変換する酵素(略してACE)の作用で、アンジオテンシンⅡという物質になります。このアンジオテンシンⅢ が血液中に放出されると、血圧が上昇します。たとえば、体重50kgの人の場合、1μg( 10万分の1g) のアンジオテンシンⅡ によって、血圧は10mmHG上昇することが確認されています。
ですから、アンジオテンシンⅡは、非常に微量でも血圧を上げる物質なのです。
一方、肝臓から先ほどとは別のたんばく質が腎臓に送られると、腎臓にある酵素によって分解され、ブラジキニンという物質ができます。
このプラジキニンが血液中に放出されると、血圧が下がります。ただし、先ほど述べたアンジオテンシンⅠ を変換する酵素、ACEには、血圧を上げるァンジオテンシンⅡを作ると同時に、血圧を下げるブラジキニンを壊す働きもします。
つまりACEが活性化すると、血圧がよりいっそう上がってしまうわけです。
ですから、ACE の作用を阻害する物質は降圧剤になります。
実際、現在では、そうしたメカニズムの降圧剤が主流となっています。ところが、ACEの作用を阻害する降圧剤は、常に薬を服用しなければならないという弊害があります。また、その降圧剤を飲むのを止めると、さらに血圧が上がってしまう、いわゆるリバウンドが強く出てしまうのです。
そこで、ACEの作用を阻害する物質が食品中にないものかという点が注目されます。
ACE阻害物質を食品から摂ることができれば、リバウンドのない穏やかな作用によって、高血圧の予防や改善に役立つのではないかと関連づけました。
実験では、まず、ACE の構造が人間とよく似ているブタから大量のACEを取り出すことに成功しました。そして、このACEを使って、約700種類の食品のテストをしてみたのです。

昔からある食品が有効

実験の結果、実に多くの食品にACE阻害物質が含まれていることがわかりました。そして、これらの食品に共通していることは、日本人が昔から慣れ親しんできた食品で、「病気や老化の防止によい」とされてきたものはかりでした。つまり、民間伝承を科学的に立証した実験となったといえます。
さて、ACE の作用を阻害する成分は、食品によりそれぞれ違いはありますが、基本的にはポリフェノール類が効いていると思われます。
ポリフェノールとは、植物の中に含まれる糖分が変化してできた化合物で、実に数多くの種類があります。たとえば、お茶に多く含まれているカテキンという成分は、多くの人が耳にしたことのあるポリフェノールの名前でしょう。
また、最近健康にいい」と話題の赤ワインには、Ⅹ種類以上のポリフェノールが含まれています。そして、こうしたポリフェノールには、「抗酸化作用」が備わっています。抗酸化作用とは、体内の脂質を酸化させたりして老化や成人病の原因になるといわれる活性酸素の害をおさえる作用です。
なかでも、そばに含まれているポリフェノールのルチンは、一日に25~50mgを摂れば、血圧を安定させ、毛細血管を強くすることが確認されています。
そばには、1gに1mgのルチンが含まれています。ですから、1日50g のそば(1食分分)を食べれば、十分な量のルチンを補給できるわけです。
ルチンについては、こちらでも『毛細血管を強くするルチン』で紹介されています。

塩分・脂肪分の過剰摂取にも注意

高血圧を考えるとき、ここまでお話ししてきたことのほかに、塩分や脂肪分の過剰摂取を控える必要があります。ただし、ひとくちに塩分といっても、塩化ナトリウムと塩化カリウムがあり、血圧を上昇させるのは塩素とナトリウムからできている塩化ナトリウム、すなわち食塩のほうです。食塩を摂りすぎると血液中にナトリウムがふえます。
すると、それに伴って血液中の液体体成分である血症の畳もふえ、血液を循環させるための負担が増大し、血圧も上昇します。

また、食塩の過剰摂取は、体に備わっている血管を収縮させる反応性を高めてしまい、やはり高血圧につながります。ところが、塩素とカリウムからできている塩分の塩化カリウムは、血圧を下げる方向に働きます。
カリウムには、血圧を上昇させる余分なナトリウムを体外に排泄する作用があるからです。ですから、高血圧対策を考える際には、食塩を控えることはもちろん、カリウムを多く含む果物や緑黄色野菜を積極的に食べることも大切です。
脂肪分のほうは、血液の粘り気を増して心臓の負担となり、血圧を上げることにつながります。ですからやはり、ふだんの食事で脂肪分を控えることが大切です。
そのほか、脂肪を「溶かす」成分が含まれている食酢や梅干し、脂肪を「へらす」成分が含まれているキノコ類、余分な脂肪を「体外に排泄する」食物繊維を多く含む野菜などを食べる習慣が重要です。

高血圧を引き起こす原因物質「ACE」の働きを抑制する食品

  • はまぐり
  • いか
  • そば
  • ワイン
  • ざくろの実
  • 梅干し
  • キウイ
  • ソラメマメ
  • 日本茶
  • 烏龍茶