イワシは血管の詰まりを防ぐ

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背の青い魚に多い成分が血栓を防ぐ

「魚をたくさん食べるエスキモーには、血栓症が少ない」という事実は、すでによく知られていることです。血栓症とは、血管中に血栓(血の塊) ができる病気、または血栓にうpって引き起こされる病気をいいます。
専門家がエスキモーの食事を分析したところ、有効成分として抽出されたのがEPA (エイコサペンタエン酸) とDHA(ドコサヘキサエン酸) という脂肪成分でした。これらの成分はイワシ、サバ、サンマなどの背の青い魚に多く含まれ、血が固まるのをおさえる作用があることがわかっています。エスキモーたちは、魚を食べて多量のEPA とDHA を摂取していた結果、血液が固まりにくい。いい換えれば血栓のできにくい血液になっていたのです。
EPA とDHAの効果についてはこちらです

一方、肉食中心の欧米人は、心臓の血管が詰まって起こる心筋梗塞や、脳の血管が詰まって起こる脳梗塞などの血栓症の発生率が非常に高くなっています。
これは、動物性の肉を食べることで、血液を固まらせる働きをもつアラキドン酸という脂肪成分が血液中にふえるため、血栓ができやすくなっているのです。

マイワシの漁獲期の冬に血栓症が激減

イワシ

いわし

それでは、日本人の場合はどうでしょうか。日本人は魚を頻繁に食べている漁村と、あまり食べない山村、これらの中間として都会の人々を対象に血液を調べ、魚に多くて血栓を防ぐEPAと、肉に多くて血栓を招くアラキドン酸の量を比較してみることにしました。

実際に魚を食べるのは、漁村では毎日、都会では過に2~3回、山村では月に数回というのが平均的な頻度です。
これに比例するように、アラキドン酸に対するEPAの割合(EPA の量をアラキドン酸の量で割った値) は、漁村では1.4、都会で0,4、山村で0,2でした。ちなみにエスキモーでは9.0、欧米人では0,03です。この対象地域の中から、北茨城の漁村・大津町などの住民について、さらに詳しく調べてみました。

血液中のEPAの量や血栓症の発生率などを追跡調査してみたのです。その結果、おもしろいデータが得られました。
一般的に、冬は寒さのために血管が収縮して、脳梗塞や心筋棟塞の発生率が高くなるといわれます。ところが、ここでは夏に比べて冬のほうが、脳梗塞や心筋梗塞が極めて少なかったのです。

大津港の冬はマイワシの漁獲期で、脂ののったイワシがたくさん獲れ、家庭で食べる畳もふえます。その結果、血液中のEPAも多くなり血栓を予防したと考えられます。反対に、イワシの漁獲高がへる3月以降では、血液中のEPA の畳も少なくなり、血栓症が急増したというわけです。こうしたEPA の効果は、実験でも確かめられています。血小板の浮遊液を入れた試験管に、

  1. 1ミリモルのEPA
  2. 2ミリモルのEPA

をそれぞれ加え、血液を固めるアラキドン酸1ミリモルを滴下しました。すると、1 の1ミリモルのEPA ではわずかでしたが血小板が固まるのを抑制する効果がみられ、2の2ミリモルのEPA ではみごとに血小板が固まるのを抑制していたのです。

実験を行ってみる

これで意を強くした私たちは、自分たちが実験台となり、人間の体で実験してみることにしたのです。

実験では、EPAを最も多く含む魚であるイワシを一度に8~10尾食べて、血液中のEPA の量を測定しました。すると、イワシを食べた後3~5時間で血液中のEPA の吸収量はピークになり、イワシを食べる前にはアラキドン酸に対するEPA の比率が約0.5だったのが、たちまち1.8にまで上昇していたのです。
これは、毎日魚を食べている漁村の人のEPA の量と同程度です。では、普通の食事に魚を取り入れた場合はどうでしょうか。

今度はイワシに限らず、カツオ、サバ、ニシンなどの背の青い魚を刺し身、煮付け、焼き物と調理法を変えて、朝昼晩の3食、3日間続けて食べてみました。
1食当たりの魚の量は、1人約300g です。2日後に血液を採取して、1ミリモルと2ミリモルの濃度のアラキドン酸を加えたところ、1ミリモルでは有意に血小板が固まるのが抑制されていました。

以上のような調査や実験から、アラキドン酸に対するEPA の割合が一定以上になると、血液の凝集が抑制されることがわかりました。したがって、血栓症を予防するには、少なくとも1日1食は魚を食べるようにするとよいでしょう。

現代人は、青魚を食べる機会が極端に減り、肉を食べる機会が非常に増えています。魚を食べる機会を増やし、肉を食べる機会を減らすことが健康を手に入れる大事な食習慣だと思います。

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