胚芽米を水に浸けてから炊くと血圧を下げる「ギャバ」が摂取できる

50%の人の血圧が下がった

「数時間、水に浸けてから炊いた胚芽つきご飯」が、高血圧を非常によく改善することを発見しました。
胚芽とは、植物の種の中で、将来芽となって成長する部分です。この効果をもたらすのは、ギャバという物質です(ギャバとはアミノ酸の一種であるガンマアミノ酪酸= ガンマアミノビューティリクアシド。頭文字をつなげて、通称ギャバといいます)。胚芽米を水に浸けると、酸素欠乏の状況になり、胚芽米に含まれるグルタミン酸というアミノ酸の一種がギャバという物質に変化します。

高血圧の8割は本態性高血圧といって、原因不明のものになります。血圧降下剤も人によって合う合わないがあるため、いろいろ調べてその人に合うものを探さなければなりません。それなのに、ありふれた食品で5割の人の高血圧が改善されるとは、医学の世界でも驚異的です。

腎臓のろ過装置

ギャバがなぜ高い血圧を下げるかについては現在、研究中ですが、一つだけ確認されているのが、ギャバによる腎臓の活性化作用です。
動物の体は、血液中の塩分が一定以上になると生きていけなくなるため、不要な塩分はすみやかに排泄されるようにできています。ところが高血圧の場合、塩分を排泄する機能がうまくいかないことが多いのです。塩分を排泄する器官といえば、腎臓です。

過剰な塩分摂取によって死亡した高血圧ラッの腎臓を調べると、基底膜細胞(ろ過装置の役割をする細胞) が死滅と再生をくり返し、最終的には再生が追いつかなくなっていました。
基底膜細胞が死滅すると、体は排泄すべき塩分を再び回収してしまい、血液中の塩分は正常値を超え、血圧はさらに上昇します。ところが、ギャバを与えたラットの基底膜細胞は、死滅することなく、塩分をどんどん排泄し、血圧を正常に保っていたのです。
このほか、脳内にたくさん含まれているギャバは、神経の抑制伝達物質(たかぶりを止める物質) であることから、血圧のコントロールを行っているのではないかとも推測されています。
実際は、ギャバは単独で効果を上げるのではなく、ともに働く相乗効果成分があって効果を発揮しています。
現段階は、その相乗効果も追究しているところです。

では、血圧降下に効果を発揮するギャバご飯を炊く方法です。米の品種としては、ギャバが生成される割合が高い米を選びます。お勧めは「コシヒカリ」で、これを米屋さんに頼むか、家庭用精米機で、七分づきにします。市販の胚芽米の「朝日」や「アケボノ」も、コシヒカリと同程度のギャバを生成します。胚芽米の場合は、酸化が早いので、2週間ほどで食べきる量ずつ購入するようにします。次が大切なポイントで、米を研いだ後、できれば40度 くらいのぬるま湯で通常どおりに水加減して2時間浸けおいてから、浸けた水ごと炊きます。
こうして水に浸けおくことで、胚芽中のグルタミン酸がギャバに変化します。ギャバは、水に浸けた最初の1~2時間の間で急激に増加します。
水でもよいのですが、40度のぬるま湯が最も効率よく、多量のギャバを生成します。ただし、夏は浸けおき中に腐敗しないように気をつけてください。
ギャバの生成量は、水に浸けてから8時間ぐらいまでゆるやかに上昇するので、冬は寝る前に水に浸け、起きてから炊いてもよいでしょう。
これを日に1合、食べます。胚芽付きの米1合はちょうど、血圧降下を期待するのに必要な1日量のギヤバを6~10mgほど含んでいます。もし玄米がお好きなら、ギャバはヌカからも生成されるので、玄米はまさに好都合。
同様に浸けおいてから炊いてください。出来上がったギャバご飯は、冷蔵や冷凍をしても、炒めご飯にしても変化しないので、いつもどおりの保存や調理ができます。
ただし、高熱を使うオープンで料理すると壊れるので避けます。ギャバご飯は、低血圧の人にもよい効果が報告されていますから、家族全員で安心して、同じご飯を召し上がってください。また、ギャバは水溶性で不要分は排泄されてしまうため、副作用の心配もありません。

はまぐりやイカは血圧上昇を防ぐ

血圧を上げる物質の働きを抑制

人間の体の中には、腎臓を中心とした血圧調節のしくみが備わっています。腎臓は、血液中の不要なものは尿として排出する働きを担っています。
一方、必要なものは保存・再吸収して、血液を正常に保ちます。そしてこれと同時に、腎臓は血圧を調節する大切な働きもあります。
腎臓が血圧を調節するしくみは次のとおりです。
まず、肝臓で作られたある種のたんばく質が腎臓に送られると、腎臓にある酵素(生体内の化学変化を促進する物質) の作用を受けて、アンジオテンシンⅠという物質ができます。さらに、このアンジオテンシンⅠは、アンジオテンシンⅠを変換する酵素(略してACE)の作用で、アンジオテンシンⅡという物質になります。このアンジオテンシンⅢ が血液中に放出されると、血圧が上昇します。たとえば、体重50kgの人の場合、1μg( 10万分の1g) のアンジオテンシンⅡ によって、血圧は10mmHG上昇することが確認されています。
ですから、アンジオテンシンⅡは、非常に微量でも血圧を上げる物質なのです。
一方、肝臓から先ほどとは別のたんばく質が腎臓に送られると、腎臓にある酵素によって分解され、ブラジキニンという物質ができます。
このプラジキニンが血液中に放出されると、血圧が下がります。ただし、先ほど述べたアンジオテンシンⅠ を変換する酵素、ACEには、血圧を上げるァンジオテンシンⅡを作ると同時に、血圧を下げるブラジキニンを壊す働きもします。
つまりACEが活性化すると、血圧がよりいっそう上がってしまうわけです。
ですから、ACE の作用を阻害する物質は降圧剤になります。
実際、現在では、そうしたメカニズムの降圧剤が主流となっています。ところが、ACEの作用を阻害する降圧剤は、常に薬を服用しなければならないという弊害があります。また、その降圧剤を飲むのを止めると、さらに血圧が上がってしまう、いわゆるリバウンドが強く出てしまうのです。
そこで、ACEの作用を阻害する物質が食品中にないものかという点が注目されます。
ACE阻害物質を食品から摂ることができれば、リバウンドのない穏やかな作用によって、高血圧の予防や改善に役立つのではないかと関連づけました。
実験では、まず、ACE の構造が人間とよく似ているブタから大量のACEを取り出すことに成功しました。そして、このACEを使って、約700種類の食品のテストをしてみたのです。

昔からある食品が有効

実験の結果、実に多くの食品にACE阻害物質が含まれていることがわかりました。そして、これらの食品に共通していることは、日本人が昔から慣れ親しんできた食品で、「病気や老化の防止によい」とされてきたものはかりでした。つまり、民間伝承を科学的に立証した実験となったといえます。
さて、ACE の作用を阻害する成分は、食品によりそれぞれ違いはありますが、基本的にはポリフェノール類が効いていると思われます。
ポリフェノールとは、植物の中に含まれる糖分が変化してできた化合物で、実に数多くの種類があります。たとえば、お茶に多く含まれているカテキンという成分は、多くの人が耳にしたことのあるポリフェノールの名前でしょう。
また、最近健康にいい」と話題の赤ワインには、Ⅹ種類以上のポリフェノールが含まれています。そして、こうしたポリフェノールには、「抗酸化作用」が備わっています。抗酸化作用とは、体内の脂質を酸化させたりして老化や成人病の原因になるといわれる活性酸素の害をおさえる作用です。
なかでも、そばに含まれているポリフェノールのルチンは、一日に25~50mgを摂れば、血圧を安定させ、毛細血管を強くすることが確認されています。
そばには、1gに1mgのルチンが含まれています。ですから、1日50g のそば(1食分分)を食べれば、十分な量のルチンを補給できるわけです。
ルチンについては、こちらでも『毛細血管を強くするルチン』で紹介されています。

塩分・脂肪分の過剰摂取にも注意

高血圧を考えるとき、ここまでお話ししてきたことのほかに、塩分や脂肪分の過剰摂取を控える必要があります。ただし、ひとくちに塩分といっても、塩化ナトリウムと塩化カリウムがあり、血圧を上昇させるのは塩素とナトリウムからできている塩化ナトリウム、すなわち食塩のほうです。食塩を摂りすぎると血液中にナトリウムがふえます。
すると、それに伴って血液中の液体体成分である血症の畳もふえ、血液を循環させるための負担が増大し、血圧も上昇します。

また、食塩の過剰摂取は、体に備わっている血管を収縮させる反応性を高めてしまい、やはり高血圧につながります。ところが、塩素とカリウムからできている塩分の塩化カリウムは、血圧を下げる方向に働きます。
カリウムには、血圧を上昇させる余分なナトリウムを体外に排泄する作用があるからです。ですから、高血圧対策を考える際には、食塩を控えることはもちろん、カリウムを多く含む果物や緑黄色野菜を積極的に食べることも大切です。
脂肪分のほうは、血液の粘り気を増して心臓の負担となり、血圧を上げることにつながります。ですからやはり、ふだんの食事で脂肪分を控えることが大切です。
そのほか、脂肪を「溶かす」成分が含まれている食酢や梅干し、脂肪を「へらす」成分が含まれているキノコ類、余分な脂肪を「体外に排泄する」食物繊維を多く含む野菜などを食べる習慣が重要です。

高血圧を引き起こす原因物質「ACE」の働きを抑制する食品

  • はまぐり
  • いか
  • そば
  • ワイン
  • ざくろの実
  • 梅干し
  • キウイ
  • ソラメマメ
  • 日本茶
  • 烏龍茶

高血圧患者の大多数に効果が期待できるカルシウム

動物実験でも効果が実証

「カルシウム=骨」が定番のカルシウムのイメージですが、カルシウムの働きは、骨を作るだけではありません。
最近の研究では、カルシウム不足が高血圧の一因となっていることや、逆にカルシウムを十分に摂取することが高血圧の予防や改善に有効であることがわかってきました。
ここでは、実際に行われた実験の結果を紹介しながら、高血圧に対するカルシウムの効果について、ごふれてみたいと思います。
実際に行われた実験では、自然発生高血圧ラット(遺伝的に必ず高血圧が起こる実験用自ネズミ) を使った実験です。この実験では、高血圧ラットを2つの群に分け、一方の群にはカルシウム入りのエサを、他方の群には一般のエサを与えて、血圧への影響を比較しました。その結果、一般のエサを食べ続けた高血圧ラットは、6週間目から少しずつ血圧が上がり始め、10週目あたりでは人間に置き換えると最大血圧300mmHg以上の数値となります。これに対して、カルシウム入りのエサを与えた高血圧ラットのほうは、6週間を過ぎても血圧の上昇がかなりおさえられました。この実験から、カルシウムは高血圧の予防や、改善に役立ちそうだという手応えをつかんだことから健康人への影響についてもリサーチしてみることになりました。

1日3本の牛乳が効果を発揮

まずは、看護学校の18歳から21歳までの女性131名を、

  1. 牛乳を1一日0~1本飲むグループ
  2. 1日1本(200cc) 飲むグループ
  3. 1日3本(600cc) 飲むグループ

の3つのグループに分け、10週間続けてカルシウムの豊富な牛乳を飲んでもらい、血
圧の変化を調査しました。

血圧の変化は最大血圧と最小血圧の両方を調べ、それぞれの血圧が高めの人、低めの人に区別して数値の変化を検討しました。
その結果、牛乳の摂取量によって血圧の変化に顕著な差が現れたのが、最大血圧が110mmHg以上だが高血圧ではない、いわば正常範囲内で高め」の人たちです。
最大血圧が110mmHg以上の人たちの場合、1 と2 のグループでは、血圧の変動はありませんでした。しかし、3 のグループでは、実験開始時の平均血圧が114mmHgだったのが、3~4週間目から徐々に下がり始め、10週間後には110mmHGまで低下しました。
最大血圧が110mmHG鞄未満の1正常範囲内で低め」の人たち、最小血圧が65mmHg以上だが高血圧ではない「正常範囲内で高め」の人たち、最小血圧が65mmHG地未満の「正常範囲内で低め」の人たちについては、いずれも牛乳の摂取量の多少にかかわらず、血圧の変動はありませんでした。
以上のことから、牛乳を.1日3本程度飲む、つまり十分な量のカルシウムを摂取すると、高めにある最大血圧は低下すると考えることができます。健康な若い人たちでこれだけの変化があったのですから、高血圧の患者さんでは、さらに確実な効果が期待できると私たちは推測しました。そこで、実際に高血圧の患者さんに継続的にカルシウム剤を飲んでもらい、個々の改善度を見ることにしました。
カルシウム剤だけを投与した例もあれば、降圧剤(血圧を下げる薬) とカルシウム剤を併用した例もありますが、いずれの場合も、投与し始めて1ヶ月目くらいで30% くらいの人に血圧の改善が見られました。
その後、改善率は徐々に上がり、6ヶ月目くらいで50~60% に達しました。これまでに250人以上の患者さんにカルシウム剤を飲んでもらっていますが、血圧がよくコントロールされ、そのうちの約50%は高血圧が改善されています。

高血圧予備軍はカルシウムで予防を

なぜカルシウム不足が高血圧を引き起こすのかということについても、だいたいわかってきました。
細胞には、常に一定の濃度のカルシウムが保たれています。この細胞内のカルシウムは、心臓や脳を動かすための情報伝達をする重要な役目をもっていて、私たちの生命を支えています。
ですから、食べ物から摂取するカルシウムが不足して、血液中のカルシウムの濃度が低下してくると、体は骨から不足分を補おうとします。ところが、骨からカルシウムが補われるとき、不足分の量だけが補われればいいのですが、そううまくいかないのです。必要としているよりはるかに多量のカルシウムが血液中に入り込み、腎臓などから排泄しきれない分は細胞内に入り込んだり、血管の壁に付着したりして、人体に悪影響を及ぼすのです。
血管壁を形づくっている平滑筋内に多量のカルシウムが入り込むと、平滑筋内が敏感になり、けいれんや収縮などの反応が起こります。
すると血流の抵抗が高くなり、血圧が上がるというしくみです。実際に、高血圧の患者さんの細胞内には、健常な人と比べて、多量にカルシウムが入り込んでいることが観察されました。
カルシウムは、いま日本人に最も不足している栄養素です。カルシウムを十分に摂取することは、高血圧の予防や改善のうえで非常に重要なことだといえるでしょう。すでに血圧降下剤を用いている重症の高血圧の場合は、カルシウムだけ摂っていればいいというわけにはいきませんが、カルシウムの摂取は、いろいろな面でプラスに働き、マイナスになることはほとんど考えられません。日常の食生活の中で、カルシウムを十分摂取するよう生活習慣を変えていくのが重要です。