大学病院の実験で納豆が目の血管の詰まりの改善に役立つ

目の血管の詰まりは失明につながる

血管が詰まる病気というと、脳の血管が詰まる脳梗塞や心臓の血管が詰まる虚血性心疾患をイメージしやすいのですが、目の血管が詰まる病気もここ最近、増加しています。

眼の網膜には、動脈と静脈がそれぞれ四本通っています。この動脈の四本それぞれが元からすべて閉塞する(詰まる) のが網膜中心動脈閉塞症、一部閉塞するのが網膜動脈分枝閉塞症です。
静脈が同様に閉塞するのが、それぞれ網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈分枝閉塞症です。網膜動脈閉塞症は、網膜動脈内に生じた此蹴(血液の塊) が網膜動脈を閉塞する。とが原因です。心臓などほかの箇所にできた血栓が飛んできて、網膜動脈を閉塞することもあります。
特にこれといった予兆はなく、あるとき突然、網膜中心動脈閉塞症では一方の目が全く見えなくなり、網膜動脈分枝閉塞症では視野の一部が見えなくなります。
これらの病気が起こるのはまれですが、発症してから1~2時間のうちに治療しないと、失明したり視野欠損(視野が欠けること) が残ったりします。
網膜静脈閉塞症は、動脈閉塞症に比べて多く、網膜内で隣接する動脈の動脈硬化の影響で、静脈内に血栓が生じ、網膜静脈が詰まるものです。
動脈閉塞症よりはゆっくり発症しますが、中心が見えにくい、視野の一部が見えにくいといった症状が生じます。
動脈閉塞症、静脈閉塞症いずれも血栓が直接の原因であり、高血圧、糖尿病、肥満の人に起こりやすいといわれています。通常、血液は固まろうとする凝固系の働きと、
溶かそうとする線溶系の働きとがバランスをとっています。ところが、なんらかの原因で凝固系が優位になると、フィプリンという物質が作られ、血栓が生じます。
そのため毛感閉塞症の治療には、綿溶系の働きをする酵素(体内の化学反応を促進させる物質)であるるウロキナーゼという素を用いた治療法が中心になります。プラスミノゲンに作用し、間接的にフィプリンを分解するわけです。

近年、このウロキナーゼと同様の働きをする成分が、身近な食品で納豆に含まれていることがわかりました。
現在、ある大学の先生が納豆の成分中にナットウキナーゼという酵素を発見しました。このナットウキナーゼには、フィプリンを直接分解するとともに、線溶系の酵素であるプラスミノゲンの働きを活性化させて、間接的にもフィプリンを分解する働きがあることが明らかになったのです。
また、眼科医である医師が、網膜中心静脈閉塞症に対する納豆の治療効果を学会で報告しています。
こうした研究成果をもとに、私たちは網膜血管閉塞症の治療として納豆を取り入れたところ、臨床的に納豆の血栓を溶かす効果をみることができたのです。

視力が回復

右目がかすむとの訴えで受診したある58歳の男性は、切迫型の網膜中心静脈閉塞症でした。もう少しで完全に血管が閉塞するところだったのです。この患者さんに、ウロキナーゼの点滴を行わず、夕食時に毎日100g の納豆を食べてもらったところ、10日日に症状の改善がみられました。1ヶ月後にはほぼ正常な血管に戻り、現在も再発することなく、視力も1.2まで回復したのです。網膜動脈分枝閉塞症で来院した21歳の女性は、突然右眼の鼻側が見えなくなったといいます。このかたに、昼食と夕食に50 gずつ納豆を食べてもらったところ、閉塞していた血管が再疎通したのです。また、訴えていた視野欠損も少し回復しました。
納豆食が網膜血管閉塞症の主要な治療法であるとはいえませんが、患者さんによってはたいへん効果的であり、期待すべき治療法だと考えています。
しかも納豆はおいしく、安全で、そのうえたいへん経済的です。治療に用いるウロキナーゼは高額な薬ですが、納豆100g に含まれるナットウキナーゼの効力は、20万円分ものウロキナーゼに相当します。
また、納豆は血栓閉塞の予防に非常に似た有効な成分であることは確認されています。
日常的に1日おきにでも50g程度の納豆を食べるのがおすすめです。
血栓は明け方に出来やすいことが確認されており、それまでナットウキナーゼの効果を持続させるためには夕食時に食べるのがいいでしょう。
血栓予防に効果がある納豆ですが、ワーファリンというお薬を処方されている人は食べるのは、厳禁です。
納豆にはビタミンKが多く含まれますがこの成分がワーファリンの働きを阻害してしまいます。
ナットウキナーゼで血栓症を予防

動脈硬化を防ぐ、血液中の酸化窒素を増やす海藻

血管の健康に大きく影響する一酸化窒素

心臓病の専門である循環器の医師の多くは、ニトログリセリンという成分からなる錠剤をよく使用しています。このニトログリセリンは、狭心症の発作に対しての特効薬として長年使われています。
狭心症とは、心臓の筋肉に血液を送る冠状動脈に起こった動脈硬化によって心臓の筋肉への血流量が減り、心臓の壁を構成している筋肉がエネルギー不足になるやがて胸が痛い、締めつけられるといった発作が起こる病気です。
そこでニトログリセリンを口に含ませます。体内に入ったニトログリセリンは、数段階の過程を経て一酸化窒素を生み出します。

動脈硬化も血栓も防ぐ一酸化窒素

一酸化窒素は、体のさまざまな細胞で作られています。血管についていえば、動脈の最も内側の内皮細胞という細胞でよく作られ、血液中に放出されています。
そもそも人間の動脈は、外側から順に外膜、中膜、内膜の三層構造になっています。
外膜は、非常に丈夫な繊維状の組織から成り立っていて、血管の強度を保っています。
中膜には、血管平滑筋という筋肉のようなものがあります。この血管平滑筋が収縮と弛緩をくり返すことで、血液の通り道の幅が変化し、血液の流れが調節されています。
内膜は、血液と接する内皮細胞とその外側にある組織から成り立っています。この内皮細胞はさまざまな物質を作って血液中に放出しています。そうした数々の物質の中の一つが、一酸化窒素なのです。一酸化窒素は、内皮細胞の中にあるアルギニンというアミノ酸(たんばく質の構成成分の一種)をもとにして作られています。そしてある種の物質や血液の刺激を受けたりすると、内皮細胞から放出されます。
こうして放出される一酸化窒素が血管の健康に大きく役立っているいるわけです。
まず一酸化窒素には、動脈硬化を防ぐ働きがあります。
動脈硬化になると、中膜にある血管平滑筋が増えたり収縮したりします。
すると、血液の通り道はどんどん狭くなり、血流は低下していきます。
しかし、一酸化窒素には、血管平滑筋がふえるのをおさえる働きがあります。
また、収縮した血管平滑筋を弛緩させる働きもあります。さらに、血管の中で血栓(血の塊) ができるのを防ぐ働きもありますし、血管を収縮させて血圧を上げる物質の働きを阻害する働きもあります。ですから、血管の詰まりを防ぐには、一酸化窒素の存在が不可欠なのです。
ただ、年をとるとともに、一酸化窒素を作り血液中に放出している内皮紳胞は死に、数が少なくなります。そして今のところ、残念ながら内皮細胞を再生させたりふやしたりする方法は、わかっていません。しかし、不足した一酸化窒素を補う方法はあります。

魚の小さい卵を夕食に食べる

一酸化窒素は、アルギニンという物質をもとにして作られています。このアルギニンを多く含んでいる食べ物をうまく摂るようにすれば一酸化窒素を補給することができます。
アルギニンを効率的にとるには、イクラやスジコ、タラコ、カズノコなど魚の小さい卵が集まった食べ物を摂ります。
卵が寄せ集まったような食べ物こそ、たくさんの細胞核が集まっていて、非常に効率的にアルギニンを体内に摂り入れることができるわけです
ただ、コレステロール値が高い人は、これらの食べ物を口に入れられるのはNGです。そうした場合は、海藻が代用できます。海藻全般も一酸化窒素を増やす食べ物といえます。
海藻にはアスパラギン酸という成分が含まれています。このアスパラギン酸は、一酸化窒素のもととなるアルギン酸が体内でできるのを助けます。
さらに、体内にアスパラギン酸があると、いったん一酸化窒素を作り出して分解されたアルギニンを再び分解前の構造に戻すことが出来ます。
簡単にいえばアルギニンから何回でも一酸化窒素を作り出すことが可能になるというわけです。
また、魚の卵や海藻は夕食時に食べるのがおすすめです。
午前6~8時という起床の時間帯が血管の収縮が多発するためです。

眠っているときは副交感神経(心臓の働きをおさえたり消化器の働きを促進したりする神経) が優位な状態で、朝起きると交感神経(心臓の働きを促進したり消化器の働きをおさえたりする神経) が優位な状態に移行していきます。この移行がうまくいかないと、血管が収縮してしまう可能性が高まってしまいます。ですから、夕食にアルギニンやアスパラギン酸を含んだ食べ物を食べておけば、起床時に起きやすい、脳梗塞、心筋梗塞などを防ぐことにつながります。

脳や心臓を破壊する血管の詰まりは朝の時間に多発

血圧の変動は24時間のリズムがある

血圧は、1日のうちに一定のリズムを刻んでいます。夜間に眠っている間が最も低く、朝起きると急激に上がります。自律神経とも深く関わっています。
日中は活動の程度に応じて変動します。そして夜に向かってだんだん低下していきます。体がそのときそのときに最も適した状態になるように調節されているのです。
血圧の高い人も、普通の人よりも値は高いですが、昼間は高く夜は低いというカープを描くのが一般的です。
ところが、このようなパターンに属さない高血圧の患者がいることが、最近になってわかってきました。この患者たちは、次の二つのタイプに分けられます。

一つ目のタイプが、夜間の血圧があまりに下がらない、あるいは逆に夜間に血圧が上昇する人です。これを「ノン・ディッパー」といいます。
「ディップ」は、「くぼみ」という意味ですから「血圧の下がり具合が少ない人」ということになります。

ノン・デディッパーは、単に血圧が高いだけでなく、ほかの臓器に障害が出ている人や、重症の高血圧の患者に多くみられます。お年寄りにもこのタイプが目立ちます。
一見健康でも、目に見えないところで臓器の障害が進んでいたり、機能が低下している場合が多いためと考えられます。

さて次に、血圧の変動のリズムが正常ではない第二のタイプにです。このタイプは、夜に血圧は下がるけれども、下がり具合があまりに急激、または大幅で、昼夜の落差が大きい人です。
このタイプを「ディッパー」といいますが、昼夜だけでなく、もっと短い時間で血圧を見ても、上下の変動が激しいのが特徴です。このような人は高血圧による病気の中でも、特に脳の血管障害が進んでいる可能性があります。

タイプにより治療が異なる

ノン・ディッパーやディッパーの人は、普通の高血圧の人よりもリスクが高いので、注意が必要です。
第一のタイプ、つまり、夜間も血圧が下がらない、もしくは上がるノン・ディッパーの人は、脳卒中や心臓病になりやすい、あるいはすでに進行している人と考えられます。
というのも、動脈硬化が進んで、血管のいたるところが狭まっていると、血管が狭くなった先の部分にまで血液を行き渡らせるには、血圧が高いほうが都合がいいわけです。だから夜間も血圧を高くして、循環を維持するように体のシステム自体が調節している可能性があるのです。
このように、たとえ血液の循環を維持するために血圧が上がっているとしても、放置しておくと高血圧によって臓器の障害がますます悪化してしまうので、血圧を下げる治療をしなければなりません。
ただし、どの程度下げるかが問題で、急に、あるいは大幅に血圧を下げると、体の機能をうまく調節できなくなる恐れがあります。
ですから、現在の機能を損なうことなく、なおかつ将来にわたって病気の発症を抑制していくためには、長い時間をかけて少しずつ血圧を下げていくような治療が大切です。次に第二のタイプ、つまり、夜間と昼間の血圧の落差が大きいディッパーの人の注意すべき点です。このタイプの人は、血圧が変動しやすいということ自体が、脳の血管障害を進行させている可能性があります。
そもそも血圧は、高くても低くても安定しているのが望ましいのです。急に血圧が下がると、血液がきちんと送り込まれなくなって、組織に障害を与える危険性があります。
急に血圧が上がると、血管に大きな負担がかかり、血栓(血の塊) ができやすくなるからです。
デイツパーの人も、昼間の血圧は高いわけですから、降圧剤などで血圧を下げるようにしなければいけません。ところが、注意しなくてはいけないのは、降圧剤の服用によって、血圧の変動がより大きくなる場合があることです。
特に、昼間の血圧だけを目安に降圧剤を服用していると、深夜に血圧が下がりすぎることがあります。このとき、脳の血管に狭くなったところがあると、睡眠中は水分の補給が途絶えているために血液が濃くなり、流れにくくなっていることも手伝い、脳梗塞(脳の血管が詰まって起こる脳卒中) を起こしてしまう危険があります。
したがってディッパーの人には、急に血圧を下げるようなタイプの効く時間が短い降圧剤は、血圧の変動を大きくしてしまうので、望ましくありません。一日に一回だけ飲めばいいような、長く穏やかに作用する薬が最適です。

どのタイプも朝~正午が危険度が高い

最初に「血圧は、昼間は高くて、夜は低い、という一日のリズムがある」といいましたが、これに関係して、すべてのタイプの高血圧患者に共通して注意が必要な「危険な時間帯」があります。これは、朝~午前中にかけてです。
朝方は、血圧が上昇しているだけでなく、脈拍の数やホルモンの分泌が増え、血液の固まりやすさも増します。
さらに前夜から水分補給をしていないため、血液が濃くなっていて流れにくい状態でもあります。さまざまな方面から血液が詰まりやすい状態になっているということです。

このとき、もし血管に傷などがあると、血栓ができやすく、出血が起こりやすいのです。しかも降圧剤を服用している人にとっては、朝起きてから薬を飲むまでの間は、薬の効き目が最も弱くなっているときなので、血圧がより高くなりがちです。実際、
心臓の血管が詰まって起こる心筋梗塞、狭心症、脳の血管が詰まったり出血したりして起こる脳梗塞、脳出血などは、明け方から起床後3~4時間に多く起きています。これを「モーニング・サージ」(朝の一撃)と呼ばれています。
モーニングサージを防止するには、朝方の血圧を調節することに加えて、「就寝前や起床時に活動をはじめる前に水分をしっかいr補給して血液の流れをよくしておくことが重要です。