半身浴は血管の詰まりに効果大

中高年は注意したい入浴の際のお湯の温度

日本人はもともとおふろ好きですから温泉旅行なども好きな人が多いです。お湯の温度へのこだわりも各人各様にあるようです。肌が真っ赤になって、ほてるほど熱くなければいやだという人もいれば、ぬるい湯でじっくり長くつかりたいという人もいます。
若い人で特に病気がなければれば基本的にどのような入り方をしてもさして問題はありません。
けれども中高年の人、または、これまでに脳や心臓の血管が詰まって起こる脳梗塞や心筋梗塞などの病気を患った人は、お湯の温度を39~40度 のぬるめに設定して入ることをお勧めします。
中高年以降は動脈硬化が進行することによって、血液の状態や血流に変化が起こります。そうすると、血管を詰まらせたり、破れさせたりする原因である血液の塊「血栓」ができやすくなりますが、お湯の温度が42度 を超えると、この血栓の生成をさらに促進してしまうのです。

血栓の生成を促す4つの危険因子

たとえば、転んですり傷ができたり、包丁で指を切ってしまったりしたとき、傷口から出血しても数分で血液は固まって出血が止まります。血液がすみやかに止まるのは、血液を固める血小板と呼ばれる血液の成分がまず最初に機能するからです。
けがをすると、血管の破れた部分に血小板が集まって固まり合い、そこへフィプリンという線椎状の物質が出てきて血液をさらに固め、破壊された箇所をふさぎます。
血小板は止血になくてはならない働きをしますが、血小板の働きが活発になりすぎると、血管が破れていないのに血液が固まって、血栓ができやすくなってしまうのです。なぜ熱いお湯は血栓の生成を誘発するのか?を紹介します。

〔その1〕熱い湯は血栓の原因となる血小板の働きを活性化させる

血小板にはβ-TG と血小板第4因子と呼ばれる物質が含まれています。この物質は血小板の働きが活性化すると血液中にふえます。44~47の熱いお湯に3分間入浴すると、明らかに両者の血中濃度が高まり始めます。

〔その2〕熱い蕩は血栓の溶解能(溶かす能力) を低下させる

血栓は健康な状態でも生成されますが、それが大事にいたらないのは血液中には血栓ができると、すぐにそれを溶かしてしまうしくみが備わっているからです。
血栓を溶かす働きをする物質をプラスミンといいます。そして、血液中にはこのプラスミンの生成を促進するTーPA と呼ばれる物質(促進物質) と、それを阻害してプラスミンの生成を阻害するPAIと呼ばれる物質(阻害物質) があります。両者の力関係は普通は対等ですが、阻害物質の力が優勢になるとプラスミンの働きが悪くなって血栓を溶かすことができなくなってしまいます。

38~41度の温泉に入浴して、促進物質と阻害物質のバランスを調べてみると、37~40度のお湯ではプラスミンの生成促進物質の血中濃度が高く、阻害物質が低下しますが、お湯の温度が42度を超えるとその逆となる傾向があります。いわゆる半身浴が体にはおすすめです。
これは42度以下のお湯に入ると、プラスミンの生成が促進されて血栓を溶かす能力が高まり、42度以上のお湯ではプラスミンの生成が低下して血栓ができやすくなることを意味しています。
また、眠りのために必須のメラトニンも熱すぎないお風呂に20~30分入ることで分泌されます。さらに寝る2時間前に入浴するのがポイントです。
就寝2時間前に入浴する

〔その3〕熱い湯は血液の粘度を上げる

血液は粘度の低いサラサラした状態であれば、よどみなく血管を通過することができます。ところが血液がドロドロとして粘り気を帯びると、血流が悪くなるとともに血栓ができやすくなります。脱水などの状態は血液の粘度が高くなっています。

血液の粘度はお湯の温度によって左右されます。42度 のお湯に下あごまでつかった全身浴と、胸の下までつかった半身浴、38度のお湯の全身浴の3例で血液粘度の変化を比べてみました。入浴時間はそれぞれ10分です。
その結果、血液の粘度が最も高くなったのは42度の全身浴でした。
ぬるめのお湯が体にいいということが確認されました。

〔その4〕熱い湯は交感神経を刺激して血圧を上げる

熱い、冷たいといった温度の刺激は皮膚を通して自律神経に届きます。自律神経とは血管や内臓の働きを調整する神経で、交感神経と副交感神経があります。
交感神経は、心臓の興奮を高めて心拍数をふやし、血圧を上げるなど全身の活動力を高めます。副交感神経は心臓の興奮を低下させて心拍数をへらし、血圧を下げるなど体を休ませるように働きます。
熱いお湯に入ると、交感神経交感神経の働きが活発になり、大きな血圧の変化を招いて出血や血栓を起こしやすくします。動脈硬化が進行している場合、血管がもろくなっているからです。
朝が苦手な人の場合、起床したら熱めのシャワーを浴びると目が覚めます。夜は逆にぬるめのお湯でゆったりつかると副交感神経が優位になり、快眠できるのです。

安心、安全な入浴法とは、ぬるめのお湯に入ることです。中高年者や血管に動脈硬化など病変のある人では、熱いお湯が健康を害する危険性が高くなります。血栓を作らないためには、ぬるい湯への入浴が最適なのです。

ここで上手なぬる湯入浴の方法をを紹介しましょう。
お湯の温度は38~40度くらいが適当です。「ぬる湯では湯冷めが心配」という人もいるでしょう。しかし次のような方法で簡単に湯冷めを防ぐことができます。
みぞおちから下をお湯につけ3~5分ほど温まります。いったん浴槽を出て体を洗ったり、コップ一杯の水を飲んでから数分後、再度3~5分間お湯につかり、浴槽を出ます。これを2~3回くり返すとおふろから出た後も皮膚の血流量の増加状態が長く続く一方、心臓に負担をかけないといった一石二鳥の効果が得られます。

脳梗塞や心筋梗塞を起こし、血栓ができたために、体にマヒが残っているという場合、リハビリの意味でお湯の中で軽く手指や足指の曲げ伸ばしを行うといいでしょう。ぬるま湯入浴に適した時間は、就眠前です。ぬるめのお湯は、副交感神経を優位にして、心身をリラックスさせるので、その後ぐっすり安眠することができるでしょう。
その後にTVを見たりパソコン、スマホなどは見ないで布団に入るといいでしょう。

お風呂が本来、あまり好きでない人は20分も入浴するのは苦痛です。入浴時にバスソルトと精油を混ぜる方法でかなりリラックスできゆったりと入浴できるでしょう。お風呂は、緊張した体をほぐすためにもとても大切な時間です。ばりばり働いている現役の人も是非おすすめです。

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チョコレートが血管のしなやかさを保って動脈硬化を防ぐ

放置できない動脈硬化

動脈硬化とは、動脈にコレステロールや中性脂肪などがたまって動脈の血管壁が厚くなり、弾力性が失われ、動脈全体が硬くなった状態をいいます。
これは、動脈の血管壁にコレステロール中性脂肪、カルシウムが沈着することによって起こります。動脈硬化は全身のいたるところで起きます。
たとえば、冠状動脈が硬化すれば心筋梗塞が、脳動脈が硬くなれば脳梗塞が起こる原因となります。また、大動脈が硬化したり、遺伝的な動脈壁の異常などで血管の一部がコプ状に膨らみ、これが破裂して大出血を起こすと、動脈瘤破裂という致命的な病気に至ります。このような深刻な事態にならないまでも、動脈硬化によって血流が悪くなれは、酸素や栄養が体のそれぞれの組織に行き渡らなくなります。そして、臓器の機能低下を招く可能性もあります。ですから、予防はもちろんのこと、早期治療が必須となります。
コレステロールの血管壁への沈着を防ぐには、薬の服用や食事・運動療法が有効です。コレステロール値が高い人は症状が進む前に医師の指導を受けたほうがいいでしょう。生活習慣、食習慣などを根本から変える必要があります。

動脈の柔軟性を握る弾性線維

動脈硬化の予防と治療には、コレステロール値を正常にするとともに、動脈の柔軟性を損なう原因となるカルシウムの沈着を防ぐことも非常に大切です。
動脈は土管のようなもので、血液はその土管を勝手に流れている、と思われがちですが、そうではありません。実際には動脈はゴムのような柔軟性に富む臓器であり、心臓の拍動に合わせて収縮をくり返して血液を先へ先へと送っています。
この動脈の収縮運動を支えているのが、動脈の周囲をパームクーヘン状に取り囲んでいる、エラスチンと呼ばれる弾力性に富んだ線維です。
動脈は外側から外膜・中膜・内膜の三層からなっていますが、エラスチンは主に中膜にへいかつきん存在する平滑筋細胞から作られています。平滑筋細胞は、自らも収縮する特性をもち動脈の柔軟性を保つ役割を担っています。
エラスチンは、たいへん弾力性のある線維です。ところが、加齢により状況は変わっていきます。
カルシウムやリン酸がエラスチンに沈着するようになり、動脈の石灰化が起こるのです。すると、動脈は弾力性を失って十分に収縮せず、血液を円滑に送り出すことができなくなってしまいます。動脈硬化を誘発する二番目の要因は、カルシウムの沈着なのです。

チョコレートの成分は、動脈を柔軟に保つことができる

エラスチンの石灰化にを抑制するのは、カルシウムの沈着を防ぐしかありません。ビタミンKは、このカルシウムの沈着を抑制する作用があります。
です。ビタミンK は、カルシウムの結合を調節する「γ-カルボキシルグルタミン酸(Gla) 含有たんばく質」(以下、Glaたんばく質)を作るからです。Glaたんばく質は、ビタミンK によってグルタミン酸( アミノ酸の一種) を元に作られ、存在する場所によって二種類に分かれます。
骨にあるオステオカルシン(骨Glaたんばく質) は骨へのカルシウム結合を強固にして丈夫な骨を作り上げる手助けをします。
軟骨や動脈など軟部組織にあるのがマトリックスGlaたんばく質で、軟骨や動脈が硬くならないよう、カルシウムイオンの結合を調節する働きをしています。
こうしたビタミンK の働きに注目し、天然物の中でビタミンKと同程度の作用をもつものが存在します。それは、チョコレートに含まれるカカオポリフェノールという成分です。実はカカオポリフェノールには、以前から動脈硬化を防ぐ働きがあることは明らかにされていました。
コレステロールをはじめとした脂質が動脈硬化を引き起こすのは、体内で発生した活性酸素と呼ばれる酸化力の強い酸素によって脂質が酸化され過酸化脂質となり、これが血管を障害するからです。カカオポリフェノールは活性酸素を消去し、脂質が血管に悪影響を起こさないように働きます。
今回、新たに確認したのは、カカオポリフェノールには、ビタミンKと同じく体内におけるミネラルの代謝(入れ替わり) を調節する働きがあるということでした。
カカオポリフェノールがもたらす動脈硬化防止作用のしくみは、まだはっきりとわかっていませんが、動脈硬化の予防にはたいへん心強いものです。
チョコレートは、抗ガン作用・抗アレルギー作用・抗ストレス効果などさまざまな生理作用を備えています。ちなみに1997年8月、122歳で亡くなった世界一長寿のフランス女性の好物はチョコレートで、毎日食べていたそうです。

血管の詰まりを防ぐ食品のベスト1はマグロのトロ

100種類以上の食品の血栓予防効果を分析

生活習慣などにもよりますが、一般に老化現象として、加齢により血管からはしなやかさが失われ、血液もドロドロと濃くなってきます。すると、血液の塊である血栓ができやすくなり、血管の詰まりが起こりやすくなります。
食物に含まれる機能性成分によって血栓の予防ができないかと、さまざまな研究が行われています。
その中で、野菜や魚の血栓を防ぐ効果を一つ一つ分析して、それを点数で表してみることにしました。
これを、「血栓予防点数」と呼んでいます。これまでに100%種類以上の野菜や魚を分析して、血栓予防点数をつけてきました。その結果、100g当たりの点数で比較して血栓予防効果が最も高かったのが、本マグロのトロで、1600点という点数でした。ほかにサバ、ハマチ、マダイが1500点前後と高く、これにマイワシ、ウナギ、サンマ、ハモと続きます。これらの魚にはE PA (エイコサペンタエン酸) やDHA (ドコサヘキサエン酸) という不飽和脂肪酸が豊富なのが特徴です。
このEPAやDHA には、さまざまな効能があることが近年の研究から明らかになってきています。
なかでも、血栓ができるのを防いだり、悪玉コレステロールをへらしたりするという働き健康にとってたいへん有用なものです。一般に食卓に上るマグロやハマチ、マダイなどはたいてい養殖のものですが、養殖の餌にはイワシが使われています。イワシもEPAやDHAを多く含む代表的な魚の一つですから、そのイワシを餌にしている養殖の魚が高得点なのは納得がいきます。
野菜については、ニンニク、ホウレンソウ、ニラ、トマトなどが高く、果物ではマスクメロン、プリンスメロンといったメロン類が高得点になっています。

血栓を予防する魚介類の点数一覧

  • 1400点以上…本マグロ(トロ)・ハマチ(養殖)・マダイ(書殖)・サバ
  • 1000点以上…ブリ・マイワシ・ウナギ(焼き)・サンマ
  • 800点以上…ニシン・サワラ
  • 500点以上…シシヤモ・サケ・アジ・アナゴ
  • 400点以上…アユ(養殖)・カマス
  • 200点以上…タイ(天然)・タラコ・カジキ・カレイ・スズキ
  • 100点以上…ツナ缶・カキ・カツオ(生)・キス・イカ
  • 100点以下…タラ・タコ・本マグロ(赤身)・クルマエビ・シジミ・アサリ

血栓を予防する野菜類の一覧

  • 100点…ラディッシュ・シュンギク・インゲンマメ・ホウレンソウ・パセリ・トマト・ニラ・ニンニク・ナガネギ・プリンスメロン
  • 50点…サラダ菜・大根菜・ワケギ・カブ・シソ・アサツキ・アスパラガス・チンゲンサイ・イチゴ・グレープフルーツ
  • 30点…モヤシ・セロリ・レモン・ミツバ・グリーンピース・ニンジン・タマネギ・ブロッコリー

1日1000点をバランスよくとる

ただし、血栓予防点数がそっくりそのまま血栓の防止に反映するわけではありません。食品の作用は薬品とは違い、さまざまな成分の複合的なものですから、絶対に正確な一定の数値というのはありえないのです。
とはいえ、血栓予防の目安としては十分に活用できると考えています。血栓予防点数のつけ方は、魚の場合はEPA 、DHA の量と血栓予防効果とが相関していることがわかりましたので、これらの含有量で点数をつけました。
野菜、果物については、やはり血栓を防止する物質であるアスピリンと効果を相対的に比較することから、点数をつけました。
この際、野菜や果物をジュースにして測定しているため、点数は水に溶ける成分の効果だけを示すものになっています。しかし、水に溶けない成分に血栓を防ぐ効果があることもありますから、実際の効果はこの限りではないでしょう。
しつこいようですが、あくまでも目安なのです。これらの数値は生の状態での値ですが、加熱、加工してもさほど効果が変わらないことがわかっています。
実験でもイワシをさまざまに加工調理したのですが、意外に数値は維持されていました。食品によっては、加熱することでむしろ血栓予防効果が高まると考えられるものもあります。では、血栓予防のためにはどのような食事を摂ればいいのでしょうか。目安としては、1日に血栓予防点数が600点になるような食事をすることです。それも、できるだけいろいろな食材をバランスよく取り入れることが大事です。点数が高いからと、マグロのトロばかりを食べるわけにはいきませんし、なにより栄養バランスを考えた場合、多種類の食品を食べるのが基本です。1回1000点以上の抗血栓食を食べるだけで血栓の予防にかなりの効果があることが、実際に食事をしたうえでの実験でわかっています。
実験は、5人で9食同じものを食べて、血液を固める血小板の凝集作用がどのくらい抑制されるか、そして血液がスムーズに流れる能力を示す流動性がどのくらい向上するかを検査したものです。実験開始時の一食目は人によって数値がバラバラだったのが、9食目には平均してきました。このことからも抗血栓食をコンスタントに食べていれば、影響がはっきり出るのでは、という印象を持っています。こうしたことから、成人病(生活習慣病) を防ぐためにも、1週間に最低2回、1回1000点以上の食事をしてほしいものです。同じ血栓予防食でも、メニューを魚中心にしたら、次の食事は野菜中心にするなどの変化をつけて、より多くの食材を取り入れるようにしてほしいものです。