bloodvessel

ごろ寝が血圧を下げる

傷ついた血管は睡眠中に修復

血圧とは、心臓から送り出された血液が血管内を流れるとき、血管壁を押し広げる圧力のことです。
この圧力が高いほど血管への負担は大きく、血管が傷みやすくなります。血管への負担が重なると、動脈硬化を招き、やがて心筋梗塞(心臓の血管が詰まって起こる心臓病) などの重大な病気になりかねません。
血圧は1日の中で刻々と変化しています。一般に血圧は、睡眠中が最も低く、朝から日中にかけて上昇します。
高血圧の養生法の一つとして、十分な睡眠をとることが勧められますが、これは、血圧が下がっている時間が長ければ長いほど、日中、高い血圧で傷んだ血管の修復ができるからなのです。
実際、睡眠時には血圧が大きく下がります。軽い高血圧の人なら、日中は血圧が高くても、睡眠時には健康な人と同じくらいになるほどです。
ただし、睡眠中でも血圧はやはり刻々と変動しています。騒音や電灯の光などの刺激があると、血圧は急上昇します。
静かな環境を保つ工夫をして、十分な睡眠をとるようにしなければいけません。血圧が気になる人は、この睡眠の効果を活用しない手はありません。
日中でも、体を横にして休む、つまり「ゴロ寝」をすることで、睡眠と同様の効果が得られます。
横になって休んでいると、心身がリラックスして、血圧はしだいに落ち着き、15分くらいでかなり下がり、30分もすると最も低い状態になります。最大血圧でだいたい一15~20mmHG、人によっては40mmHGも下がる場合もあります。しかも、ゴロ寝による降庄作用は、ふだんの血圧が高い人ほど大きいのです。高血圧の人は日中、できれば午前と午後の2回、30分ずつほどゴロ寝をしたいものです。仕事をしている人も、休み時間などを利用して、体を休める習慣が血圧を下げるきっかけになります。

なぜ、横になるだけで血圧が下がるか?

横になると、手足や内臓の無理な血管収縮がとれる

人間は重力の関係で、立ったままでいると血液が下半身にたまります。そこで、ある程度以上血液がたまらないように、そして大切な脳の血流がへらないように、手足や内臓の血管が収縮して、血液を心臓に押し返します。
これが血圧を上げているわけです。横になって休めば、手足や内臓の無理な血管収縮がなくなり、血圧が下がるのです。

横になると、腎臓を流れる血流量がふえ、血圧を強力に上げる物質であるレニンの活性が弱まる

腎臓に流れてくる血液量がへると、腎臓はレニンという物質を分泌し、その作用により血圧を上げて、腎臓の血流量をふやそうとします。しかし、横になると腎臓の血流量は自然にふえますから、レニンの活性が弱まって血圧は下がります。

リラックスすることで、交感神経の緊張がゆるみ、血圧を上げる作用のあるアドレナリンの分泌がおさえられる

自律神経(意志とは無関係に体の機能を調節する神経) の1つである交感神経が緊張すると、神経の末端からノルアドレナリンが放出され、また腎臓の上にある副腎という器官からアドレナリンが分泌されます。これらのホルモンは、血圧を上げます。横になってリラックスすることによって、交感神経の緊張がゆるみ、ノルアドレナリンやアドレナリン
の分泌がおさえられると血圧が下がるのです。

以上のような理由から、ゴロ寝をすることによって、血圧を下げ、傷んだ血管を修復することができるわけです。とはいえ、1一日中ごろごろしているのはよくありません。高血圧の改善のためには、適度な運動も欠かせません。ウォーキングや自転車こぎなどの運動は、血圧を下げる効果があることがわかっています。
医師に相談して、自分に合った運動を指導してもらい、生活に取り入れるようにしてほしいものです。
食事の面では、なんといっても減塩が高血圧療法の基本です。食塩は1日6g程度に制限するよう努めましょう。
タバコは論外です。アメリカでは高血圧療養の第一に禁煙があげられています。喫煙にょるニコチンや一酸化炭素は動脈硬化の進展に拍車をかけ、たとえ血圧を下げても功を奏さずに、心筋梗塞を起こす危険があります。お酒も、ストレス解消に役立つ面もあるとはいえ、暴飲は禁物。適量を楽しんで飲むことです。以上のことを、ゴロ寝とともに日常の習慣に加えるようにします。

胚芽米を水に浸けてから炊くと血圧を下げる「ギャバ」が摂取できる

50%の人の血圧が下がった

「数時間、水に浸けてから炊いた胚芽つきご飯」が、高血圧を非常によく改善することを発見しました。
胚芽とは、植物の種の中で、将来芽となって成長する部分です。この効果をもたらすのは、ギャバという物質です(ギャバとはアミノ酸の一種であるガンマアミノ酪酸= ガンマアミノビューティリクアシド。頭文字をつなげて、通称ギャバといいます)。胚芽米を水に浸けると、酸素欠乏の状況になり、胚芽米に含まれるグルタミン酸というアミノ酸の一種がギャバという物質に変化します。

高血圧の8割は本態性高血圧といって、原因不明のものになります。血圧降下剤も人によって合う合わないがあるため、いろいろ調べてその人に合うものを探さなければなりません。それなのに、ありふれた食品で5割の人の高血圧が改善されるとは、医学の世界でも驚異的です。

腎臓のろ過装置

ギャバがなぜ高い血圧を下げるかについては現在、研究中ですが、一つだけ確認されているのが、ギャバによる腎臓の活性化作用です。
動物の体は、血液中の塩分が一定以上になると生きていけなくなるため、不要な塩分はすみやかに排泄されるようにできています。ところが高血圧の場合、塩分を排泄する機能がうまくいかないことが多いのです。塩分を排泄する器官といえば、腎臓です。

過剰な塩分摂取によって死亡した高血圧ラッの腎臓を調べると、基底膜細胞(ろ過装置の役割をする細胞) が死滅と再生をくり返し、最終的には再生が追いつかなくなっていました。
基底膜細胞が死滅すると、体は排泄すべき塩分を再び回収してしまい、血液中の塩分は正常値を超え、血圧はさらに上昇します。ところが、ギャバを与えたラットの基底膜細胞は、死滅することなく、塩分をどんどん排泄し、血圧を正常に保っていたのです。
このほか、脳内にたくさん含まれているギャバは、神経の抑制伝達物質(たかぶりを止める物質) であることから、血圧のコントロールを行っているのではないかとも推測されています。
実際は、ギャバは単独で効果を上げるのではなく、ともに働く相乗効果成分があって効果を発揮しています。
現段階は、その相乗効果も追究しているところです。

では、血圧降下に効果を発揮するギャバご飯を炊く方法です。米の品種としては、ギャバが生成される割合が高い米を選びます。お勧めは「コシヒカリ」で、これを米屋さんに頼むか、家庭用精米機で、七分づきにします。市販の胚芽米の「朝日」や「アケボノ」も、コシヒカリと同程度のギャバを生成します。胚芽米の場合は、酸化が早いので、2週間ほどで食べきる量ずつ購入するようにします。次が大切なポイントで、米を研いだ後、できれば40度 くらいのぬるま湯で通常どおりに水加減して2時間浸けおいてから、浸けた水ごと炊きます。
こうして水に浸けおくことで、胚芽中のグルタミン酸がギャバに変化します。ギャバは、水に浸けた最初の1~2時間の間で急激に増加します。
水でもよいのですが、40度のぬるま湯が最も効率よく、多量のギャバを生成します。ただし、夏は浸けおき中に腐敗しないように気をつけてください。
ギャバの生成量は、水に浸けてから8時間ぐらいまでゆるやかに上昇するので、冬は寝る前に水に浸け、起きてから炊いてもよいでしょう。
これを日に1合、食べます。胚芽付きの米1合はちょうど、血圧降下を期待するのに必要な1日量のギヤバを6~10mgほど含んでいます。もし玄米がお好きなら、ギャバはヌカからも生成されるので、玄米はまさに好都合。
同様に浸けおいてから炊いてください。出来上がったギャバご飯は、冷蔵や冷凍をしても、炒めご飯にしても変化しないので、いつもどおりの保存や調理ができます。
ただし、高熱を使うオープンで料理すると壊れるので避けます。ギャバご飯は、低血圧の人にもよい効果が報告されていますから、家族全員で安心して、同じご飯を召し上がってください。また、ギャバは水溶性で不要分は排泄されてしまうため、副作用の心配もありません。

はまぐりやイカは血圧上昇を防ぐ

血圧を上げる物質の働きを抑制

人間の体の中には、腎臓を中心とした血圧調節のしくみが備わっています。腎臓は、血液中の不要なものは尿として排出する働きを担っています。
一方、必要なものは保存・再吸収して、血液を正常に保ちます。そしてこれと同時に、腎臓は血圧を調節する大切な働きもあります。
腎臓が血圧を調節するしくみは次のとおりです。
まず、肝臓で作られたある種のたんばく質が腎臓に送られると、腎臓にある酵素(生体内の化学変化を促進する物質) の作用を受けて、アンジオテンシンⅠという物質ができます。さらに、このアンジオテンシンⅠは、アンジオテンシンⅠを変換する酵素(略してACE)の作用で、アンジオテンシンⅡという物質になります。このアンジオテンシンⅢ が血液中に放出されると、血圧が上昇します。たとえば、体重50kgの人の場合、1μg( 10万分の1g) のアンジオテンシンⅡ によって、血圧は10mmHG上昇することが確認されています。
ですから、アンジオテンシンⅡは、非常に微量でも血圧を上げる物質なのです。
一方、肝臓から先ほどとは別のたんばく質が腎臓に送られると、腎臓にある酵素によって分解され、ブラジキニンという物質ができます。
このプラジキニンが血液中に放出されると、血圧が下がります。ただし、先ほど述べたアンジオテンシンⅠ を変換する酵素、ACEには、血圧を上げるァンジオテンシンⅡを作ると同時に、血圧を下げるブラジキニンを壊す働きもします。
つまりACEが活性化すると、血圧がよりいっそう上がってしまうわけです。
ですから、ACE の作用を阻害する物質は降圧剤になります。
実際、現在では、そうしたメカニズムの降圧剤が主流となっています。ところが、ACEの作用を阻害する降圧剤は、常に薬を服用しなければならないという弊害があります。また、その降圧剤を飲むのを止めると、さらに血圧が上がってしまう、いわゆるリバウンドが強く出てしまうのです。
そこで、ACEの作用を阻害する物質が食品中にないものかという点が注目されます。
ACE阻害物質を食品から摂ることができれば、リバウンドのない穏やかな作用によって、高血圧の予防や改善に役立つのではないかと関連づけました。
実験では、まず、ACE の構造が人間とよく似ているブタから大量のACEを取り出すことに成功しました。そして、このACEを使って、約700種類の食品のテストをしてみたのです。

昔からある食品が有効

実験の結果、実に多くの食品にACE阻害物質が含まれていることがわかりました。そして、これらの食品に共通していることは、日本人が昔から慣れ親しんできた食品で、「病気や老化の防止によい」とされてきたものはかりでした。つまり、民間伝承を科学的に立証した実験となったといえます。
さて、ACE の作用を阻害する成分は、食品によりそれぞれ違いはありますが、基本的にはポリフェノール類が効いていると思われます。
ポリフェノールとは、植物の中に含まれる糖分が変化してできた化合物で、実に数多くの種類があります。たとえば、お茶に多く含まれているカテキンという成分は、多くの人が耳にしたことのあるポリフェノールの名前でしょう。
また、最近健康にいい」と話題の赤ワインには、Ⅹ種類以上のポリフェノールが含まれています。そして、こうしたポリフェノールには、「抗酸化作用」が備わっています。抗酸化作用とは、体内の脂質を酸化させたりして老化や成人病の原因になるといわれる活性酸素の害をおさえる作用です。
なかでも、そばに含まれているポリフェノールのルチンは、一日に25~50mgを摂れば、血圧を安定させ、毛細血管を強くすることが確認されています。
そばには、1gに1mgのルチンが含まれています。ですから、1日50g のそば(1食分分)を食べれば、十分な量のルチンを補給できるわけです。
ルチンについては、こちらでも『毛細血管を強くするルチン』で紹介されています。

塩分・脂肪分の過剰摂取にも注意

高血圧を考えるとき、ここまでお話ししてきたことのほかに、塩分や脂肪分の過剰摂取を控える必要があります。ただし、ひとくちに塩分といっても、塩化ナトリウムと塩化カリウムがあり、血圧を上昇させるのは塩素とナトリウムからできている塩化ナトリウム、すなわち食塩のほうです。食塩を摂りすぎると血液中にナトリウムがふえます。
すると、それに伴って血液中の液体体成分である血症の畳もふえ、血液を循環させるための負担が増大し、血圧も上昇します。

また、食塩の過剰摂取は、体に備わっている血管を収縮させる反応性を高めてしまい、やはり高血圧につながります。ところが、塩素とカリウムからできている塩分の塩化カリウムは、血圧を下げる方向に働きます。
カリウムには、血圧を上昇させる余分なナトリウムを体外に排泄する作用があるからです。ですから、高血圧対策を考える際には、食塩を控えることはもちろん、カリウムを多く含む果物や緑黄色野菜を積極的に食べることも大切です。
脂肪分のほうは、血液の粘り気を増して心臓の負担となり、血圧を上げることにつながります。ですからやはり、ふだんの食事で脂肪分を控えることが大切です。
そのほか、脂肪を「溶かす」成分が含まれている食酢や梅干し、脂肪を「へらす」成分が含まれているキノコ類、余分な脂肪を「体外に排泄する」食物繊維を多く含む野菜などを食べる習慣が重要です。

高血圧を引き起こす原因物質「ACE」の働きを抑制する食品

  • はまぐり
  • いか
  • そば
  • ワイン
  • ざくろの実
  • 梅干し
  • キウイ
  • ソラメマメ
  • 日本茶
  • 烏龍茶